青い花の布団

つかいこなせてません

「未だ沈まぬや沈遠は」という軍歌となって有名になった軍艦松島の水兵を描いた「黄海之戦我松島之水兵臨死問敵艦之存否三枚続」(小林清親画)で、将校が剣を持っていることを指摘する。本来は海戦の指揮には刀は不要なはずだが、将校=武士的精神=刀というイメージを鑑賞者、すなわち国民全体に定義付けさせるために事実とは異なる描写を故意にしている。戦地に赴いたことのない国民に大して、軍隊を「武士」と結びつけ、勇敢で攻撃性をもつ人物として具象化させようとしたのであろう。        

絵画という芸術媒体も軍歌と同様に、戦争を美化したり日本という国が強大で正義感に溢れている国であるということを国民全体に盲信させるために利用されていたことがわかった。製作者も、芸術性に富んでいる作品よりも強化性や報道性という面を強調している。本来、芸術というものは、宗教画や歴史画などある程度図像学上の定められた解釈を必要とするものもあるが、鑑賞者の自由な解釈で見ることが許されているし、その時の感情で同じものを見ても違うもののように見えることもある、自由で開かれたものである。その性質が芸術の醍醐味と言えるだろう。しかし、講義を聞いたり資料を読んで分かったように、戦時下における芸術作品は、日々民衆の目に触れながらもそれらは個人個人に向けられていたものではなく、「挙国一致」や「新しい国民」を作り上げるための国家のための芸術であった。そもそも、芸術作品と呼ぶことすらふさわしくないだろう。音楽は戦争推進に多大に貢献し、戦時下を生きていた戦争があることが当たり前であった子供たちに兵隊になることへの憧れを植え付ける役割などを果たし、絵画は日本が諸外国よりも優位であることや武士イデオロギーを賞賛する役割を果たしていた。現在身の回りにある私たちの生活に彩りや楽しみ、また学びを与えてくれる音楽や絵画について考えさせられた。